摂氏温度と華氏温度 (1) 定義と関係性
海外旅行の際、しばしば気温表示に華氏温度が見られます。
基本的に日本では使われない表記のため、数値を見てもどのくらいの気温なのか感覚がつかめないことは多いのではないでしょうか。
ここでは、両者の温度の定義と換算について考えます。
【目次】
1. 摂氏温度とは
2. 華氏温度とは
3. 摂氏温度から華氏温度への変換
1. 摂氏温度とは
摂氏温度はスウェーデンの天文学者Celsiusにより1742年に提唱されたもので、『℃』の記号を用います。
摂氏という日本語表記は、Celsiusの漢字表記である『摂爾修斯』に由来しています。
当初は1気圧下での水の沸点を0℃、凝固点を100℃としたものでした。
現在と軸の向きが逆ですが、後に1気圧下で水の凝固点を0℃、沸点を100℃とした体系に改められました。
なお、厳密には現在の摂氏温度の定義は下記の通りになります。
やや理工系寄りの話ですので、飛ばしても問題ありません。
まずは、『水の三重点の熱力学的温度(絶対温度)の1/273.16倍を熱力学的温度1K(ケルビン)とする』定義から、水の三重点は273.16Kとなります。
更に、摂氏温度は常に熱力学的温度よりも273.15だけ大きいという関係性から、水の三重点は0.01℃と定められます。
なお、水の三重点は固体(氷)・液体(水)・気体(水蒸気)が共存する状態で、約611.5Pa、つまり約6.12hPa(約0.006気圧)の条件下で0.1℃となります。
余談ですが、この三重点の気圧条件を満たす高度を、火星においては標高0mと定義しています。
この厳密な摂氏温度の定義では、1気圧下での水の凝固点は0℃をわずかに上回り、沸点は100℃をわずかに下回ります。
少し込み入った話になりましたが、実用上は『生活環境下で水が凍る温度を0℃、水が沸騰する温度を100℃』と考えて全く差し支えありません。
2. 華氏温度とは
華氏温度はポーランド王領プロシア(現在のポーランド)の物理学者Fahrenheitにより、摂氏温度よりも早い1724年に提唱されたもので、『℉』の記号を用います。
華氏という日本語表記は、Fahrenheitの漢字表記である『華倫海特』に由来しています。
当初は氷と食塩の混合物を0℉、通常時の人体温度を96℉としていました。
その後、当初の定義による値を生かしつつも水の状態変化と関連した定義に改められ、水の凝固点が32℉、沸点が212℉とされました。
つまり、水の凝固点と沸点の温度差は華氏温度180℉分であり、これが同じように水の凝固点と沸点の差である摂氏温度100℃分に対応します。
華氏温度は日本人には馴染みが薄いものですが、アメリカなど一部の国では天気予報でも日常的に使われています。
3. 摂氏温度から華氏温度への変換
これまでの話から摂氏温度と華氏温度の関連性を考えます。
両者を紐つけることのできる情報とその解釈は下記の通りです。
・温度が華氏180℉分上がると、摂氏100℃分上がる
それぞれの温度における水の凝固点と沸点の定義から判ることです。
これは、摂氏温度から華氏温度への変換の際、傾きが9/5の直線になることを表しています。
・水は摂氏温度0℃で凍り、そのとき華氏温度は32℉である
それぞれの温度における水の凝固点から判ります。
これは、摂氏温度から華氏温度への変換の際、切片が32になることを表しています。
以上より、摂氏温度Cと華氏温度Fの関係は次の式となります。
F=9/5×C+32
これより、摂氏温度が5の倍数のときに華氏温度が整数になることが判ります。
主な値と共にグラフのイメージを示しておきます。
華氏32℉が摂氏0℃、華氏104℉が摂氏40℃というポイントをおさえておくだけでも、華氏温度が格段にイメージしやすくなるのではないでしょうか。
次回は、華氏温度から摂氏温度を即座に変換するための具体的な方法についてです。
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