北朝鮮旅行記 (1) 行き方、費用と列車での入国(2018年7月)

前回は、日本から移動して北朝鮮と接する中国国境の街 丹東までの具体的な行き方などの内容でした。
今回は北朝鮮へ行くためにはそもそも何をしなければならないのかも含めた記録となります。

【目次】
1.  北朝鮮基礎情報
2.  北朝鮮の入国準備
3.  北朝鮮へ
4.  平壌初日

1. 北朝鮮基礎情報

人口 :2,516万人
面積 :120,538平方キロ
首都    :平壌
公用語:朝鮮語
時差 :UTC+9(日本と時差なし)
通貨 :北朝鮮ウォン(KPW)
レート:KPW1=JPY0.124(2018年7月23日時点)
ビザ   :必須(2018年7月時点)

2.  北朝鮮への入国準備

そもそも北朝鮮旅行を考えたのは、2018年1月だった。

2016年始にアメリカ人オットー・ワームビア氏が北朝鮮のツアーで滞在していたホテルのポスターを盗もうとして当局に拘留され、2017年6月に北朝鮮が『人道的見地』により解放してから僅か数日で死亡した不幸な事件。
氏が参加していたのが、北朝鮮の専門旅行会社YPT(Young Pioneer Tour)が催行していたツアーだった。
そのことをきっかけにYPTを知り、最も安い2泊3日でEUR445のUltra Budget Tourの開催日を定期的に見るようになっていた。

とある時点で、2018年7月13日~15日の2泊3日でツアーが開催されることを知った。
北朝鮮への観光は陸路の場合は丹東発が基準となるため、ツアーが2泊3日でも日本と丹東の間の移動を考えると、前後それぞれ1日ずつ余分に必要になる。
そのため、日本の海の日を絡めた3連休にツアー開催がかぶったことは非常に幸運で、有給は2日間に抑えられることで現実的に行ける絶好のチャンスだった。

しかしながら、その時点ではYPTは日本人の受け入れをしていなかった。
日程は合いながらも受け入れてもらえない時間が数ヶ月あり、かと言って個人旅行にすると20万円は超えるので、それもどうかと思い膠着する状態が続いた。

ところが、YPTの方針が変わり2018年1月から日本人旅行者の受け入れも開始されることとなり、いよいよ本格的に渡航を考えることになった。
当時は金正恩による周辺諸国への挑発的な言動や核実験・ミサイル実験が続いていたため、嫁には反対された。
しかし、北朝鮮という国(日本人にとっては正確には『国』ではない)がもしかしたらなくなってしまうこと、もし本当に戦争が近い雰囲気になればキャンセルして行かないという選択肢もあるということなどを話し、了承を得た。

YPTに参加表明をしてからは、下記を求められた。

・参加用紙の記入
・ビザ申請要旨の記入
・ビザ用写真の提出
・免責同意書の記入

免責同意書以外は、何か不測の事態があってもYPTに損害を求めないとする、ダイビングや登山でよく見るもの。
ただ、一般のツアーでは基本的に見たことはない。
これらの提出と、ツアー代金の支払を以って正式申し込みとして受理された。

3.  北朝鮮へ

7月13日(金)、丹東の宿を7時半に出て徒歩で丹東駅に向かった。
YPTからは朝の8時に丹東駅の入口に集合するように言われていたため。

入口が複数ある恐れがあったり、集合場所が若干曖昧だったので、合流できない可能性を危惧して事前にYPTに問い合わせたところ、『丹東駅の入口は一つしかないし、ツアーは非中国人の集団だからすぐ判る』という趣旨の返事が来た。
実際に着いてみるとその通りで、迷うようなことは一切無かった。

ツアーは参加者約25人の集団で、聞いた範囲だけでもスペイン・フランス・イギリス・フィンランド・カナダ・フィリピン・シンガポール・メキシコ・キューバなど多種多様な国から参加者が集まっていたが、中国人は含まれていない。
参加者は2つのグループに分けられ、それぞれのグループには西洋人ガイド1名がつき、基本的には英語で全ての説明が進められる。
自分のグループは、自分含めた12名の参加者と西洋人女性ガイド1名。

西洋人女性ガイドからその場でTourist Card(ビザ)を受け取ると、受け取り次第、全員が各々のビザの写真を撮り始めた。
そのガイドは、自国(イギリス)で大学時代に日本語を4年間勉強していたらしく、また、神戸に暮らした経験も2年あるために非常に流暢な日本語を話すことができた。

ひとしきりビザの撮影が終わると、駅の構内に入って2階に向かった。
1階は丹東発の各国内列車の発着場、2階は税関と出国審査場になっており、中国側の出国スタンプを押された。
出国後には列車の待合室があり、意外に人が多い。
と言っても、日本人は皆無。


10時前になると、待合室からホームに出て列車に乗り込んだ。
北朝鮮に向かう列車の専用ホームで、人の数の割りには立派なつくり。

列車は時間通り10時に出発。
少しすると北朝鮮の入国カードが配られ、丹東から15分も走らないうちに北朝鮮の入国手続きをするための駅に着いた。
ここから入国審査が終わるまでは写真撮影は厳禁で、西洋人ガイドからも参加者に念を押された。

駅では、旅行客は列車に乗ったままで北朝鮮の係員が巡回してくる。
まずは女性係員がやってきてパスポートの写真・ビザの写真が本人と一致しているかの確認がされ、いったんパスポートもビザも回収された。

それが終わると男性係員がやってきて荷物検査と携帯端末の持込の確認。
バッグの検査は全員の荷物を開いて内容を確認するが、思ったほど厳しくはなく、日本のイベント会場に入るときの形式的な荷物検査とそう変わらないように思えた。

北朝鮮に関して書かれた印刷物・宗教に関する印刷物・ポルノ・200mmの望遠レンズの持ち込みは不可。
持ち込む携帯端末の確認も並行して行われ、型番の確認までされて係員には控えられる。

最後に別の男性係員が来て入国カードの確認が行われた。
問題なく必要事項が書いてあるか程度の確認で、問題が無ければ回収される。
他国と違うのは、『Office and Position』で勤務先と役職、『Invited by』で招待者を書く点だろうか。
一部の国でビザ申請用紙に書かせることがあっても、入国カードに書かされたことは明確に記憶にはない。
なお、『Invited by』には、北朝鮮の現地ツアー会社であるKITCと書くようにYPT側のガイドから指示があった。

この北朝鮮側の国境駅での一連の確認のために2時間ほど列車は停止し、全員の確認が完了するとパスポートとビザの返却が行われた。
短い時間とはいえ、パスポートが手元に無いことは不安だった。

再び列車は動き出し、沿線にはひたすら緑の風景が続く。
電車は3段6人の半個室で、丹東出発から平壌着までの7時間半以上をベッドで過ごすせるため、かなり快適。

長い乗車時間の間、寝台に横になったり参加者同士で話をして時間をつぶすが、平壌市内が近づくとみな一斉に窓の外を眺めだした。
ビルが建っているとか車が多く走っているとか、頭では当たり前だと判っていることでも現地に来て実際に見ることで大いに盛り上がる。

予定通り18時45分に平壌駅に到着。
平壌はソウルや日本と同じ時間帯であるため、中国の丹東よりは1時間プラスの時間となる。
つまり、丹東を10時に出てから7時間45分も列車に乗っていたことになる。

ホームに降りると、北朝鮮人ガイド6名が出迎えてくれた。
参加者は北朝鮮人ガイドと挨拶をしたり、ホームの様子を写真に収めたりと、かなりエキサイトした様子。
結局、自分のグループは参加者12名・西洋人ガイド1名・北朝鮮人ガイド3名の16名で行動することになった。

4.  平壌初日

駅を出て、各グループ毎にバスに乗って平壌市内に向かった。
10分もしないうちに夕食場所近くで下車し、ガイドの引率で周辺を軽く散歩した。
クレヨンしんちゃん柄の靴下をはいた子供やスマホ歩きの市民も見られる。
観光客に見せても問題の無いエリアを選択的に案内されているのだろうとはいえ、想像以上に高層ビルが多い印象を受けた。

夕食はキムチ、何らかの根菜、キャベツのサラダ、トマト、水餃子的なもの、腸詰的なもの、米ベースのケーキ的なもの。
あまり口には合わず、キャベツとトマトが相対的に一番おいしかった。

夕食を終え、21時前にレストランを出るとすっかり暗くなっていた。
電力事情が良くないとされる北朝鮮ではあるが、夕食中は停電はなく、周囲のビル群にも電灯は問題なく灯っているように見える。

夕食を終えてChongyoung Hotelにチェックインした。
今回のツアーがUltra Budget Tourという最安値のものの割に、宿泊ホテルの見た目は割と豪華。
外国人旅行者が泊まる宿は一定の水準にしているということだと思われる。
ただ、ホテルの外に一歩出ると堆肥の強烈な臭気にあふれていた。

部屋は基本的にツインで、ツアーに参加しているメンバーとの相部屋。
一人希望の場合は1泊当たりEUR40でアレンジ可能。

部屋に置かれたホテルのパンフレットと比較すると、部屋が少し立派なように感じた。
一般的な噂では部屋の鏡がマジックミラーになっているとか盗聴器が仕込まれているとされているが、少なくとも自分の部屋の鏡は接着剤で壁にべったりと付けられているような具合で、壁をくりぬいてマジックミラーにしている感じではなかった。

ただ、盗聴器は自分が調べたところで存在は全く判らないので、部屋とはいえ政治的な話などは控えた方が無難に思われる。

通常は少し大きなホテルに泊まると設備などを見て回るが、変に目をつけられるのも嫌なので部屋の外に出ることはなく、そのまま寝た。

 

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