北朝鮮旅行記 (3) 平壌の地下鉄、凱旋門、遊園地(2018年7月)

前回は、平壌市内の観光の様子をご紹介しました。
2013年以来5年振りとなるマスゲームに向けた練習の様子などをお伝えしましたが、今回は平壌の地下鉄などをご紹介します。

【目次】
1.  平壌地下鉄と凱旋門
2.  祖国解放戦争勝利記念館と現地スーパーマーケット
3.  主体思想塔と遊園地

1.  平壌地下鉄と凱旋門

続いて、平壌の地下鉄を体験することになった。
地下鉄という言葉を聞いたツアー参加者の喜びっぷりは大きく、大歓声が上がった。
改札は日本などと同様にICカードを接触させて乗る形式。

改札からホームまでは地下100m分をエスカレーターで下る。
乗ってから降りるまで約3分ほど。
有事の際のシェルターとして使われるため、ここまでの深さになった。

列車内には金日成・金正日の肖像が飾られている。
意外だったのは、我々観光客の中の女性客を見た現地の方が積極的に席を譲る様子だった。
まさかそういったことをされると思わず、譲られた側も驚いていた。

1駅だけ乗ってすぐに次の駅に降りた。
奥には金正日を描いた絵画が飾られているが、この駅だけではなく全般に金日成もしくは金正日の絵が飾られていた。
次に来た列車に乗って、再び先へと進む。

列車内では、スマホでゲームに興じる姿も。
遊んでいる人数は日本ほど多くないが、よく見ると数人が似たようなことをしていた。
なお、北朝鮮人は必ず左胸に金日成・金正日の赤いバッジをつけており、これはいつも心に留めるという意味がある。

最終的に5駅ほど乗り、凱旋門最寄りの駅で降りた。
有名なパリの凱旋門よりも10m高く1982年完成。
金日成による抗日革命を記念して作られた。

凱旋門の屋上にはRMB20(約330円)でのぼることができる。
奥の細長いピラミッド上の建物は平壌最大のホテルだが、外装が1989年に完成した後は資金難により内装が未完成のまま、以降ずっと放置されているのだとか。

凱旋門の観光を終えて昼食のレストランに向かう途中、バスの中で北朝鮮人のガイドが現地の伝統的な歌を何曲か歌ってくれた。
ツアー参加者はみな乗りがよく、合いの手を入れて大いに盛り上がった。
その後、北朝鮮人ガイドが次々とツアー参加者を指名して各々の出身国の伝統的な歌を歌うよう促され、自分は『ふるさと』を歌った。
カラオケ嫌いな自分ではあるが、不思議とこの時はそれほど嫌な気にはならなかった。

昼食は、魚肉ソーセージの炒めもの、キムチ、卵、水餃子、寒天、豚肉の炒めなど。
魚肉ソーセージは大丈夫だろうと思ったが、あまりに日本のものと味が違っていて全く口に合わなかった。

メインは平壌冷麺かビビンバから選ぶ。
2018年5月の南北首脳会談で韓国の文在寅大統領が希望して話題になったこともあり、ほとんどのツアー参加者は冷麺の方を選んでいた。
そば粉が練りこまれているために黒っぽい色をしている。

レストランの給仕が、各ツアー参加者のテーブルを回り、ひとりひとりの冷麺のセットをしてくれた。
からしを一すくいに酢や醤油を適量入れ、よくかき混ぜる。
非常に弾力の強い麺で、思ったよりも美味しく頂けた。

2.  祖国解放戦争勝利記念館と現地スーパーマーケット

昼食を終え、午後の最初に立ち寄ったのは祖国解放戦争勝利記念館。
金日成により1950年に始められた朝鮮戦争は日本に朝鮮特需をもたらし、太平洋戦争で疲弊していた日本経済が復活する契機を与えたが、一方で3年に及んだ戦争で朝鮮半島は荒廃した。

結果的に北緯38度を停戦ラインとして休戦協定が結ばれたが、これは北側にとっては『従来の政治体制を勝ち取った』と解釈され、この勝利記念館が建てられた。
現在のものは3代目での建物となっている。

敷地には1968年に北朝鮮により拿捕されたアメリカの情報収集艦 プエブロ号も海に浮かべられている。
展示されているプエブロ号には『今も他国に拿捕されているアメリカの軍船』と説明書きがなされており、北朝鮮と米国の関係を物語る。
当時、アメリカはベトナム戦争の真っ只中であり、かつ朝鮮半島での休戦協定の破棄もできず、密偵行為を認める書面に板門店でサインをすることになった。

続いて、平壌市民が利用する市場に案内された。
1階は食料品、2階は家電や衣料品、3階は食堂という構成で、市場内の撮影は禁止となっている。
飲み物を見て回っていると、突然ビール瓶が音を立てて割れ、店員が淡々と掃除していた。
店員の慌てない様子からよくあることなのだろうと推測されるが、内圧に耐えられないようなビール瓶で製品が製造されていることに驚いた。

1階には両替所もあり、ドル・ユーロ・中国元・日本円から朝鮮ウォン(KPW)への両替ができる。
行った時点のレートは、USD1=KPW8,150、EUR1=KPW9,515、RMB1=KPW1,220、JPY1=KPW69。
誰もが見られるネットでのレートはJPY1=KPW8くらいなので、実勢での北朝鮮ウォン現地レートは非常に安いということになる。

現地で買ったものは、子供用のノートKPW2,300(約35円)、1.25lの炭酸飲料KPW1,400(約20円)、スナック菓子KPW1,300(約20円)。
現地製は日本の2割くらいの物価というイメージだろか。
なお、その他の物価としてはスプライト500mlペットボトルがKPW4,400(約65円)、サンガリアの350ml缶がKPW6,300(約90円)、ファンタの350ml缶がKPW10,800(約155円)、業務用サイズのキッコーマン醤油やブルドックソースが約KPW40,000~58,000(約580~840円)、日本製粉ミルク缶が約KPW300,000(約4,350円)。

意外だったのが、スナック菓子に書かれていたISO22000の文字。
国際的な秩序には背を向けながらも、ISOには向き合うという姿勢が興味深い。
監査などを受け入れるのも大変そう。

3.  主体思想塔と遊園地

スーパーで1時間ほど買い物をした後はチュチェ思想塔(主体思想塔)に行った。
高さ170mの塔で、RMB40(約660円)の別料金にて150mの展望台までエレベーターで上がることができる。

チュチェ思想はマルクス思想の流れを汲み、金日成により体系化された北朝鮮の指導指針であり、経済自立・自主政治・自衛を強調する一方で指導者の強い統率が必要とされる。
金日成・金正日・金正恩と続く現在の支配体制の後ろ盾とも考えられるものである。

塔の展望台からは平壌市内が広く見渡せる。
風が非常に強く、帽子を飛ばされたツアー参加者もいた。
あちこちで白い体操服の生徒達がマスゲームの練習をしている。

搭から大同江をはさんで金日成広場が見える。
昼からずっとマスゲームの練習が続いているようだが、日もだいぶ傾いていたので過ごしやすくはなってきた。
奥の緑屋根の建物は、午前に行った人民大学習堂。

チュチェ思想塔から降りてバスに乗り、平壌市内観光の最後として党創建記念塔に着いた。
朝鮮労働党創立50周年の1995年に完成し、高さ50mに揃えられた3本の腕と道具から成っている。
向かって左からそれぞれ労働者・知識階級・農民を表している。

夕食は焼肉レストランに行った。
最後の夕食ということもあり、これまでと違って肉が主体のため、欧州系メインの参加者は大喜び。
経済制裁の中で食糧事情も良くないことが実情なのだろうが、観光客にはそういったところを見せないようにするという観点もあるのだろう。

食事中には現地人による歌や踊りのショーも披露された。
エレキギターなど、通常の北朝鮮のイメージらしくないものも含まれる。
約2時間の食事中に3回もの停電がおき、やはり電力事情はよくないということを感じた。

夕食後、21時過ぎに遊園地に行った。
人は多くなく、各アトラクションは人数が集まってから動かすような形式。
入場料は、海外観光客料金でRMB10(約170円)。

各アトラクションは海外観光客はRMB20~25(約330円~420円)。
もはや日本と変わらない価格だが、ツアー参加者の3割くらいはどんどん乗っていた。
絶叫系マシンに乗って『I love Pyonpyang!!』と叫んでいる様子は愉快だが、食事中に30分おきくらいに停電が起きていた状況からして、自分は乗る気にはならなかった。

ツアー参加者が遊園地で5つくらいのアトラクションを見届け、宿に戻った。
チップ代わりに部屋においてきたRMB5の札はちゃんととられていた。

 

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