世界遺産の登録基準 自然遺産(ⅶ)・(ⅷ)・(ⅸ)・(ⅹ)
前回までに文化遺産の登録基準を2回に分けて紹介しました。
今回は自然遺産の登録基準についてです。
【目次】
1. 自然遺産とは
2. 登録基準(ⅶ)：優れた自然美
3. 登録基準(ⅷ)：地球の歴史の主要段階を示す見本
4. 登録基準(ⅸ)：生態系
5. 登録基準(ⅹ)：生物多様性
1. 自然遺産とは
World Heritage Convention(世界遺産条約)の第2条において、自然遺産の定義として下記の3つが挙げられています。
・Natural Features(自然の特長)
無生物または生物の生成物・生成物群から成る自然の特長であって、鑑賞上または学術上、顕著な普遍的価値を有するもの。
・Geological and Physiographical Formations(地質学的または地形学的形成物)
地質学的または地形学的形成物、及び脅威にさらされている動植物種の生息域として明確に定められた地域であって、学術上または保存上、顕著な普遍的価値を有するもの。
・Natural Sites(自然の地域)
自然の風景地および明確に定められた自然地域であって、学術上、保存上または景観上、顕著な普遍的価値を有するもの。
上記の定義の範疇であり、且つ、これから示す登録基準のうち(ⅶ)～(ⅹ)のいずれか1つ以上を満たすものが自然遺産となります。
なお、文化遺産・自然遺産双方の登録基準を満たす世界遺産は複合遺産と呼ばれます。
2. 登録基準(ⅶ)：優れた自然美
・定義
『ひときわ優れた自然美や美的重要性をもつ、類まれな自然現象や地域』と定義されています。
世界遺産であることを知らずとも、見ただけで感動できる景色を持つ遺産に認められていることが特徴です。
・代表的な海外の遺産
タンザニアの『Kilimanjaro National Park(キリマンジャロ国立公園)』やベリーズの『Belize Barrier Reef Reserve System(ベリーズ・バリア・リーフ自然保護区)』などが該当します。
大自然の傑作とも呼べるような素晴らしい視覚的特徴を持つ遺産に認められています。
・代表的な日本の遺産
『屋久島』が該当します。
日本の遺産では屋久島のみに認められています(2018年7月時点)。
3. 登録基準(ⅷ)：地球の歴史の主要段階を示す見本
・定義
『生命の進化の記録や地形形成における重要な地質学的過程、または地形学的・自然地理学的特徴を含む、地球の歴史の主要段階を示す顕著な見本』と定義されています。
動物の化石遺跡なども含まれることが特徴です。
・代表的な海外の遺産
ナミビアの『Namib Sand Sea(ナミブ砂漠)』やジンバブエ・ザンビアの『Mosi-oa-Tunya / Victoria Falls(モシ・オ・トュニャ/ヴィクトリアの滝)』などが該当します。
その形成過程が地球の歴史を物語るような遺産に認められています。
・代表的な日本の遺産
日本にはこの基準が認められている遺産がありません(2018年7月時点)。
4. 登録基準(ⅸ)：生態系
・定義
『陸上や淡水域、沿岸、海洋の生態系、また動植物群集の進化、発展において重要な、現在進行中の生態学的・生物学的過程を代表する顕著な見本』と定義されています。
豊かな食物連鎖を有することが特徴です。
・代表的な海外の遺産
ベネズエラの『Canaima National Park(カナイマ国立公園)』やマレーシアの『Kinabalu Park(キナバル自然公園)』などが該当します。
多種多様な動植物が相互に関係しながら生きる遺産に認められています。
・代表的な日本の遺産
『白神山地』や『小笠原諸島』などが該当します。
日本の自然遺産全件で認められています(2018年7月時点)。
5. 登録基準(ⅹ)：生物多様性
・定義
『絶滅の恐れのある、学術上・保全上顕著な普遍的価値を持つ野生種の生息域を含む、生物多様性の保全のために最も重要かつ代表的な自然生息域』と定義されています。
重要な固有種の保護地域なども含まれることが特徴です。
・代表的な海外の遺産
アルゼンチン・ブラジルの『Iguazu National Park(イグアスの滝)』やエクアドルの『Galápagos Islands(ガラパゴス諸島)』などが該当します。
陸地だけではなく海も含め、希少な動植物種が生きている地域を含む遺産に認められています。
・代表的な日本の遺産
『知床』が該当します。
日本の遺産では知床のみに認められています(2018年7月時点)。
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